広帯域アナログ演算ICの入力バイアス電流
アナログ演算ICといえばオペアンプが代表的です。また複雑な演算をするアナログICもあり、演算可能な周波数帯域も年々広がっています。
このアナログ演算ICはいくつかの入力端子と演算結果が得られる出力端子、さらにオフセット端子や付属機能の端子などが設けられています。
高い精度で演算結果を得るために、アナログ演算ICは0.1%誤差の金属皮膜抵抗で温度特性は50ppm/℃など高価な抵抗器を使うことも多くなります。また抵抗のバラつきを考慮して高精度の抵抗アレーを使うこともあります。(抵抗誤差は1%でも、同じアレー内の抵抗のばらつきは0.1%というものを使ったほうが抵抗単品を並べるよりも良い結果が得られることが多い)
ただ、そういった高価な外付け部品を使って出力は0Vを望んでもmV単位のオフセット電圧が出力されることが経験されます。
この傾向は広帯域化された演算ICほど顕著になります。
アナログ演算ICのデータブックには実に多くのパラメータについて数値やグラフが描いてあり、全てを理解して使うのは難しい面もあり、結果上記のようなオフセット電圧などはオフセット端子にボリューム(VR)などをつけて調整してしまう、ということも多くあると思います。ただ入力電圧が変化したり、出力回路が変わるとオフセット電圧が再び発生したり、オフセット調整用端子からのオフセット電流が影響することもあります。
このアナログ演算ICのたくさんあるパラメータにはたいがい入力オフセット電流という項目を見ることができます。また入力オフセット電流の温度特性のグラフも提供されていることがあります。
この入力オフセット電流というのは、簡単には入力端子から流れ出る、あるいは流入する電流値です。しかし実に曲者で、シンプルなオペアンプを例にとると、入力オフセット電流が1μAと書かれていれば、入力とアナロググラウンドに10kΩの抵抗が接続されれば10mVの電圧が発生します。オペアンプには+、-と書かれた入力がありますが、-側には出力から抵抗で負帰還抵抗を接続します。これらの合算抵抗値を各入力に接続して入力オフセット電流により発生するオフセット差動電圧を打ち消す(バーチャルショートとは別に)ことが原理上できます。
しかし実際にはオペアンプの入力、出力には別の回路網が接続され思うように出力オフセット電圧を小さくできないことが往々にしてあります。また広帯域オペアンプなどは差動アンプの入力がバイポーラトランジスタで構成されているものも多く、入力オフセット電流の温度系数も大きいことから温度変化で演算結果が大きく変わることもしばしばです。サーミスタで補正しようとしても大概はうまくいきません。
特効薬はありませんが、直近に接続された部品の精度だけでなく、回路網にも目を配り、オフセット電流により発生する電圧が同じになるように工夫するしかありません。
数MHz以上になるとインダクタなども入ってきて抵抗を入れていたつもりが直流的にはインダクタによりグラウンドと短絡していたなどということはよくありますので確認してみると良いでしょう。また交流、高周波を扱うのであればコンデンサでカップリングすることで直流的に回路網を切り分けることも可能です。
広帯域アナログ演算ICはオペアンプを含め位相余裕の問題で寄生発振が話題になりますが、直流的な面での考察も設計時にしておくと、妙な出力が計測された際、寄生発振なのかオフセット電圧なのかが切り分けし易くなり、あとで楽をすることができます。
